吾輩は猫のキューピッドなのにゃ
吾輩は猫のキューピッドなのにゃ
その頃、私は小学校の低学年の子供だった。家から歩いて三分のところに、いい感じのおばさんが居る写真屋があった。そこで出会ったのが「ミー」だった。半分黒虎、半分白の、可愛い仔猫だった。もらって来た「ミー」は半年も生きずに死んだ。車にはねられたのだった。
それから二十年経った今日。私の前に「ミー」が再び現れた。実に、二十年振りの再会である。仔猫でもなく、成猫でもない。半分が黒虎の、きれいな猫だ。
「ミー」にそっくりな猫だと、私は思った。
コンビニへ、猫の餌を買いに行った帰りに、その猫が二メートル後方を「尾行」してきた。
私が立ち止ると、猫も立ち止った。私が振り向くと、ニャーと鳴いた。可愛い。白い脚が、眩しいくらいに白い。紅い首輪をしていた。実にきれいな猫だ。
「ミー」と呼ぶと、猫はまたニャーと鳴いた。私はコンビニの袋からキャットフードの袋を取りだして上部を手でちぎり、カリカリの中身を左の掌に載せた。しゃがんでその左手を差し出すと、猫は走ってきて食べ始めた。
私がそんなものをわざわざ買いに行ったのは、通勤コースで何匹も、猫を見かけるからだった。七割は逃げない猫たちである。そのうち三割は、声をかけると返事をする。餌をあげればもっと親しくなれるだろう。私はそう、思った。それで、キャットフードを買った。
二十年間で飼った猫は六匹。死ぬところを見たことはない。早ければ一年弱、長かったので五年くらい。或る日、帰ってこなくなる。
作品名:吾輩は猫のキューピッドなのにゃ 作家名:マナーモード