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天通商店街

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 残りの店も回り、チケットはとうとう最後の一枚となった。商店街は、ほとんど終わりに近づいている。もう店は無く、入ってきた方向とは逆側の端に辿り着いていた。
 こちら側の端は、向こう側がよく見えなくなっている。そちらの空間は、直視出来ないほど眩い。
 ふとハルが、こちらへと手のひらを差し出した。
「最後の一枚、僕に頂戴」
 私は黙って、最後の一枚を綴りごとハルに手渡した。それを受け取ったハルは一つ頷くと反対側の手で私の手を取った。
「さあ、行こうか」
 ハルは微笑むと、私の手を引いたまま光の中へと身を差し入れた。
 ハルが光に包まれる。あまりに眩しくてよくは見えないが、ハルの身体が急激に成長していくのが判った。
 手を引かれ、いつの間にか自分も光の中にいた。包み込むような、温かな光だった。
 光の中でハルがこちらを見ている。ハルの姿は少年から青年へ、青年から壮年へ、そして更には老年へと移っていった。
 やがて自身にも、ハルと同様の変化が起こっていることに気がついた。それと同時に、頭の中のもやが晴れていく。
 すっかり少年らしさの無くなったハルの顔を見る。その顔には、覚えがあった。


「……春次郎さん」


作品名:天通商店街 作家名:牛頭馬頭