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天通商店街

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 それから私は、ハルに案内されるがままに商店街を見て回った。やはり何処の店でもいるのは異形たちばかりだったが、私も次第に慣れていった。ハルがいたからというのもあったが、異形たちは皆親切にしてくれた。何故かは判らないが、ここの人たちはこういうものなのだと普通に思えるようになっていった。
 次々と店を見て回る。その度に私はチケットを渡し、店主はそれに応じた物をくれたり、何かを見せてくれたりした。
 異形が商う店は、先程の肉屋のように普通のものもあったが、ちょっと風変わりなものもあった。

 「ミー」と看板の掲げられた店では、二本足で歩く三毛猫が店主をしていた。尻尾の先が二つに裂けている。猫又というものかもしれない。その店主の名前が店の屋号になっているらしかった。
 そこでチケットを渡すと、小さな舞台で子猫が踊るのを見せてくれた。どれも店主そっくりな三毛猫たちだった。拙いながらも一所懸命に跳ね回って踊っている姿は、とても愛らしい。
 舞台が終わってふと気がつくと、今度は大人だがこれも店主によく似た三毛猫が膝の上で丸まっていた。ぐるぐると喉を鳴らしている。
 それを見た瞬間、何故かわからないが急に胸がいっぱいになって涙が零れた。何となく嬉しいような、切ないような不思議な気持ちだった。
 すっかり泣き止んだ頃には三毛猫は、出てきたときと同じようにいつの間にか消えていた。店主に見送られて店を出る。
作品名:天通商店街 作家名:牛頭馬頭