天通商店街
ざあっと葉擦れの音がした。頭上を鳥たちが飛び越えていく。
ふと視線を上げると、公園の向こう側にアーチが見えた。更にその向こうにはアーケードが続いている。どうやらそこは、商店街のようだ。
公園を抜け、アーチの前に立った。アーチには「天通商店街」と書かれている。
アーケードは奥へずっと続いており、反対側の端は見えない。ずらりと店舗が並んでいたが、どの店もシャッターが下りており、開いている店は見当たらなかった。アーケード内にも人が歩いている様子は無く、閑散としている。シャッター商店街を通り越して、もはや打ち捨てられた廃墟のようであった。
何となく興味を引かれて、商店街の中へと足を踏み入れてみた。
―――薬局、靴屋、レストラン
シャッターや看板を眺めながら奥へと進む。
―――総菜屋、青果店、洋品店
やはり開いているような店は無い。
―――電気屋、和菓子屋―――
と、そのとき、一種異様な彩りが目に飛び込んできた。
いや、それ自体は別段変わった光景ではなかった。だが、シャッターが立ち並ぶ灰色に近いくすんだ世界の中では、それは異色の存在だった。
一軒だけ、シャッターが開いていた。
中からは光が漏れている。遠目にはそれはたばこ屋のように見えた。対面式の小さな店舗。ここからでは文字は読めないが、赤い電気看板には明かりが点っているようだ。こんな中で営業しているのだろうか。
訝しく思いながら、その店との距離を詰めていく。
ようやく看板の文字が読めるような距離に至ったとき、自然とその足が止まった。
―――魔法発券所―――
そこには「たばこ」の代わりにそんな文字が書かれていた。限りなく怪しい。異様、という印象はある意味正しかったと言える。