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貝殻

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 しかし、葉子にはこう想ってて欲しい。「いつも親密とは謂えぬ、仕事上のプライベートが偶に、発生するぐらいの浅いが、遠慮の不必要な関係。だが、何かが・・安心する。このふたりだと。」
そう、それだけで、いいんだ。そう想っててくれることは、わたしにとり安泰な将来、未来の仕事の希望を生む。
そして、今後、葉子とのからみはストレートに仕事へ差し向けてみせることが可能だ。ここでもう一点、仕事上のことはわたしとしてはプライベート。つまり、葉子とはわたしの側は仕事と仕事外で両天秤で割り切れないのだ。
 あんなことで失敗した。なんて、もうこの年齢で謂いたく無い。葉子は、まだそれが許されるであろう。葉子はまだ22歳だ。そんな年齢で全てを見通せなんて、無理は謂えない。そしてわたしの時間とまわりの時間は同時期に同調を強要されることもなしに夕刻へと進んでいた。
 ん?待てよ。そうなんだ?んん??そっか、忘れていた。彼方に置いて来た、経験の数々。幼少のころ楽しかった。あの想い出。そして、それを楽しみとして、捨てて来た、またその想い出、過去の記憶が上書きされるに連れ、わたしは世間成れして行く。そうして、わたしは大人に成った。そんだけなのさ・・・。忘れていたモノを振り返らない、振り返れないって事は。
やはり、大人はすばらしい。ずるさを文明を得た、人類の如く、大人である見栄えで利器として利用する、利用することができる。それは石を磨いで、鋭い刃先にする行為に似ていた。遠慮含みに大人であれることを利用すべきではない、むしろ積極的に・・。このとき、わたしはそう想った。このさき葉子とはどうなるのだろ?そこに大人な関係は介入してくるのか?とほほ、不安。
 そうよ、まだ22歳である葉子はまだ幼少と大人の移行点でやや、不安定で大人という武器の使い方も、どういう武器を得れるかもよく判っておらず、手にとった武器を振りかざしてすら居ない。また、その武器の重さと責任性も理解不足だ。でもやはり、わたしとしては葉子には大人であって欲しい。
そんな付き合いを望んで居たわたしであった。そして、きっと葉子サイドも仕事の関係と割り切っていたであろう。そしてときは流れた。
日曜のこの時間が夕刻から夜にかわったようにふたりも出会い〜隠遁〜始まり〜発展への順序を辿る時間を暮れ染まる外世界の如く、冬の空をいつか明ける、朝の空への期待のように時を経ていた・・・。
 いつか、みた、空。そんな事を想いながら、勝手な妄想にウツツを省く。いけないことじゃないが、いつかみた空は決して濁りなき透明ではなかった。遠い過去の空もわたしの記憶ではそうだった。そんなはづでわたしの24年間はただ、ひたすら、わたしを夜明けから日没までだけを光照らしていた。そう、日がおちる夜は照らす光が居てくれないのだから。で、こうだ。妄想の相手は葉子。最近つとにそう想う。必死なんだ。お互いに、しかしわたしの周囲ではひたすら、この結果に介在する魔の手が自分で薦んで得たのか付きまとい、他人含みの展開になりつつある。今度こそ、あの対面すると美しいひと、あの女性とは食事以外でもうまくやっていこう、いま以上に、そうおもい語り継がれる、真面目さに一人の葉子に傾倒を決心したわたしであった。不埒は決してイケナイのさ・・。簡単。簡単ってなんだろ?でも自分はこの考えは簡単な行為だと断定した。ほかの女性をみた時もそう。断じて裏切らない簡単さだった。
 真摯にいく決意も新たに、自分勝手な振る舞いは許されない、そして葉子はわたしにはもう十分、真摯に思えた。女性だからだろか。そんなこんなで、葉子も自分なりの哲学感をもったらしい、それは稚拙であろうと、誤りの角度から選ばれた心理で無ければOKだ。わたしはその様に許容する。そして腹が空いた。晩御飯の準備をし出した。ん?そうだ。肉を焼きながらその焼き加減と焼く際でる音がなぜだか愉快だった。心理的に随分かたづいた問題が多かったせいであろう。そうして今夜の自虐的な愉快さは間延びして、食事の充実をもカバーしてくれた。そんなこんなで・・・・。
そのときだった、それが起こったのは、とある、隣の住民が差し入れを普段付き合いも全然ないのに持参してくれた。あの枝豆、邪魔にならない食材だったので、わたしは食事のつまみにと、大いに喜んだ。そして、ふたりでありたいと願う心細い期待と環境のわたしの食事は寡黙で進んだ。そうおもう、稚拙とはつねに遠慮では語りつくせぬ次元で発揮される方も多々おられる用法であり、それは葉子に取っても楽観していいものでなく、つねに大人による許容と監視が必要なシロモノであった。そしてわたしも葉子への寛容な視線を保つ、そうすれば何かが回天すると進捗を希望するのは容易いがそれがどうしても抜け出さない希望のわたしで在った・・。
日曜の夜が明けた。月曜に成った。それでは、とわたしは日々使っている電車で毎度の都会へ繰り出した。いつもの様に受付をビルの1階で済ますと、偶然そこで今日は葉子に出会い、わたしから声をかけた。葉子はなにか落ち着かなさ気だった。
 お決まりの定型あいさつで在った。が、そこにはやはり内面の何かが介在していた。お互いに。心理的な好意がお互いの内には少なくともわたしにはあって、葉子はこの朝の偶然の出会いからのあいさつには好意を、含めたつもりだったのだろうか?否、含めたという作為ではまづい。無意識レベルじゃないと。葉子の側に含まれていたのは自前の親近の定型ではないが、軽いだけの好意感にしかわたしからは見えなかった。そして落ち着かない理由もなんだかわたしは想像出来た。
葉子の軽い笑みの中そこの全体姿にわたしは明らかな恥じらいを発見した。そして、こう語り出した。
「ねえ。課増さん、私今日ちょっと相談があって。昼食ごいっしょできませんか?いいですよね?おねがいします。」
「?」とわたし。この会話の以前に僕は葉子の照れにも似た表情の機微を発見してた事は自分で得物のおおきさを、感激してこの葉子の語り掛けが満更予想と掛け離れたものでは無いことを迎え入れ、素直に喜んだ。
 「そうなの。じゃぁ、社外で、とろうか?」
「はい、お願いします。ちょっとここではあれなので・・。」
そうだね。と謂おうとしたがわたしはその文を発するのは止めにした。
そして、この繋がりでわたしは穿った、別の言い方・表現文に変えた。
「ここじゃ、言いにくいかな?なら仕事外のことだね、わかった、じゃぁ、それまで楽しみに待つよ。じゃ例の件での話の打ち合わせをしとかなきゃ。もう、始業時間だ。頑張らないと・・。」
わたしが止めた表現というのは、ここでは伏せて置く。それはあまりにも、あざとく葉子の機微を見抜いたことを乱用しすぎてる感が否めず、すぐ取り止めた表現種だった。だから、止めた。それは実際、相手の前で発するより、隠す方がもっとずるかった種のもので在ったと思う・・・。昼の11時頃、わたしは今朝の社の受付前でのやりとりのことを頭に置いて他の仕事をしていた。
だが、実際葉子は、昼食はわからないが他の誰かとか1人でとりに行ってしまった。わたしは完全にあぶれた。しかたない、とおもい男性社員の友人と社員食堂で昼食をとり急いだ。
作品名:貝殻 作家名:ぴろ色