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仁科 カンヂ
仁科 カンヂ
novelistID. 12248
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Green's Will ~狂人たちの挽歌~

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「そうよ! きえぇぇぇ!」
 パティは、奇声をあげながら、机の上に飛び乗ると、狂気の笑みを浮かべながらリベンを見下ろした。
「利用するだけ利用して、使いものにならなくなったら辞めろだと? そんな勝手な話があるかあ! いつの時代だってそう……才能あるものが去り、ずる賢いだけのものが生き残るんだわ……うーんパティちゃん、可哀想だわ……うるうるうる」
 机の上で大袈裟に崩れ落ちるパティ。その様子をリベンとメリーンは冷ややかな目で見つめていた。
「あのーパティさん? 今までこの会社で何をしていました?」
 リベンは引きつった笑顔を覗かせながらパティの顔を覗き込んだ。
「え?」
「だから、この会社のためになるような働きをしましたかって聞いてるの」
 悲劇のヒロインになりきっていたところに、リベンからの思わぬ言葉にメリーンはしばし考え込んだ。
「私の前では強気でも、あの方の前では形無しですわね」
「しょうがないだろ。逆ギレした奴は手に負えないんだよ。慎重に事を進めないとな」
 リベンとメリーンが眉間にしわを寄せて話をしている頃、パティはようやく考えがまとまったのか、晴れやかな表情でリベンを見つめた。
「したよ。会社に来たらおやつを食べて、十二時になったらお昼寝して、三時になったら遊んで、それから……」
「仕事してねえじゃないか。それに何だ。おやつって」
「仕事を円滑に進めるための潤滑油よ」
「それは仕事をやる奴の台詞だよ。潤滑油をやっても仕事をしないんじゃどうしようもないわな」
 次第に笑顔が引きつっていくリベン。対してパティは相変わらずあっけらかんとしている。
「仕事? 何の?」
「あのーパティさん?ここ何する所か知ってますか? ……知っていたら、何の仕事? って聞かないよね」
 リベンはいよいよ、怒りが爆発しようとしていたが、その顔はギリギリ笑顔を保っていた。
「あは。うん」
 パティは、そんなリベンの心中を読み取れないのか、更に緩い表情で答えていった。
「この野郎! お前今まで何しにここへ来ていた!」
「あは、遊びに」
「ぶっ殺す! 今度という今度はぶちっときたね。俺は今まで、こんな奴に給料やっていたのか。自分自身にもぶちっときたね。覚悟しろ! このただ飯食らいめ!」
 リベンは、怒りに顔を引きつらせながら、猛烈な勢いでパティに向かい殴ろうとした。対してパティは、緩い表情そのままで、ことごとくリベンの攻撃をかわしていった。
「社長いけませんわ。事を慎重に進めるんでしょ?」
 メリーンは、リベンが窮地に陥っている様子にニンマリしながら見つめていた。
「止めるな。こればかりは話が別だ」
「今まで気付かなかった社長が悪いんじゃない」
 パティは全く悪びれる様子がなかった。
「何だと!」
 リベンは、再度パティに殴りかかるが、難なくかわされてしまった。
「どうして当たらないんだよ!」
「毎日殴られていたら、かわす方法ぐらい覚えるよね」
「くやしーい。なっ分かるだろ、俺の辛ーい気持ちが。こいつと一緒に仕事をすると全然進まないんだよ。しまいには逆切れするし」
 目に涙を浮かべながら、悔しい気持ちを激白するリベンだったが、これまでの恨みがあってか、メリーンは薄ら笑いをしながらリベンを見つめた。常に余裕を見せながら自分を追い詰めていたリベンが、今度はパティによって追い詰められる。口には出せなかったが、メリーンにとって快感以外なにものでもなかった。
「今更泣き言言われても遅いですわ。さっきまで散々私を侮辱したくせに……」
「そうだったな。でも分かっただろ? お前を呼んだ理由が」
「分かりましたわ。社長が散々馬鹿者と罵りましたけど、あの方よりはそうでないようですものね」
 自分が採用された理由。無能なパティに代わって、有能な自分が入ることによって、会社の益となる。それをリベンは意図したのだ。メリーンは、ついさっきまでひどく罵られていたが、本心はそこにあると理解し、目の色を変えた。やっぱり自分は必要とされていると思ったのだ。
「そうだ。とにかくまともな奴が欲しかった」
「まともだったら誰でもよかったんですの?」
「うん。そうだ」
「私の才能に惚れ込んで……」
「違う」
 自分の思惑と大きく外れる悲惨な現実にメリーンは肩を落とした。
「……分かりましたわ。社長にとんだ掘り出し物をみつけたなあと言わせてみせますわ。もう頭にきた!」
「まあ宜しく頼むわ」
 うなだれるメリーン。パティの馬鹿さ加減に頭を抱えるリベン。それぞれの苦悩に顔を歪ませている最中、その緊張を破るようにパティが口を開く。
「あのう!」
 パティは、恐る恐るリベンの顔を覗き込んだ。
「何だ、びっくりした」
「自己紹介……まだしてないよね?」
「もうしましたわ」
 メリーンは、なんだそんなことかと呆れ顔でパティを見つめた。
「あんたじゃなくて私の」
「随分唐突だな」
「そんな方なんでしょ?」
「言われてみればそうだな」
 パティは自己紹介をしたくてたまらないのか、リベンとメリーンの会話が終わるのを待ちきれずにいた。
「私の名前は、パティ・チェリーブロッサム、桜でーす!」
 パティの高いテンションと裏腹に、リベンとメリーンは冷めた顔をしている。
「はい。仕事始めようか」
 リベンのかけ声とともに、リベンとメリーンは仕事にとりかかろうとした。しかし、パティは納得しない。
「え? もう終わり? 普通、質問コーナーとかあるでしょ?」
「お前のせいで無駄に時間を使っているんだよ。もういいだろ? 早く始めるぞ」
 苛立ちを募らせるリベン。リベンの言ってることはもっともだと、頷くメリーン。しかしパティは納得しない。
「いやーん! 質問コーナーしたーい!」
 パティはリベンの言うことを理解しようとせず、思いっきり駄々をこねた。リベンとメリーンは余りにも我が侭なパティの言葉に開いた口がふさがらなかったが、リベンはいつものことだと諦めの表情を浮かべながら、やっとのことで怒りを収め、無言でメリーンを見つめた。
「……分かった。メリーン、適当に質問しろ」
「えー!」
 パティを力で押さえつけると思っていたメリーンは、リベンの思わぬ言葉に非難の声をあげた。
「お前まで駄々をこねるのか? 早くしないと仕事が始まらないんだよ。早くやれ」
「パティさんの前では社長も形無しですわね」
 パティは、二人が遣り取りをしている間、何故か正座をして待っていた。メリーンと目が合うと、同じように自分の目の前で正座をするように促した。メリーンはパティが何を意図しているのか見当がつかなかったが、つられて、同じように正座した。
「パティさん。趣味はなんですの?」
「遊ぶことです。メリーンさんは?」
「私ですか? そうですわね。ペットのパンジーと遊ぶことですわ」
「そうですか。私たち気が合いそうですね」
「どこからそんな言葉が出るんですの」