ヴァーチャル・ルーム
「美咲はこの世界が好き?」
僕は彼女にそう尋ねる
美咲は此方を向いて
「は?何のこと?なに言っているの?」
訝しげに僕の顔を覗き込む
「いや、質問というか
この自分という存在が属しているこの世界
大暮明人という自分を認識しているこの世界の話だよ
江口美咲の存在しているこの世界の話
なんというか俺はこの世界と、例えばインターネットとかで訪れる世界との
違いは何なのかな?って昨日ずっと考えていた」
「はぁ?そんなこと考えて無いで勉強しなさいよ・・・」
「俺は勿論、この世界が嫌いでは無い
俺はまだ17歳だし健康だし、頭も容姿もそこそこだと悪くは無いとおもってる
そしてお前みたいに可愛い彼女もいて・・・
彼女は頭脳明晰で見目も麗しくて・・・
そんな彼女とセックスもできる・・・」
「やめてよ、声が大きい」
彼女が、あたりを訝しげに見渡す
「ああ・・・いやそんなことがまあ言いたいんじゃなくて
つまりこの世界に固執する理由なんてあるのかなって思って・・・」
美咲は片手で自分の髪を撫でる
其れはとても美しい
17歳の彼女は無敵だ、其れはどうしても抗う事のできない
この世界の創造者の一つの魔法だと思う
「良くわからないけど・・・だって私はココに生まれたんだから・・・
考えたことあまりないけど・・・
だって私は私なんだからココで生きるしかないというか・・・
こんな話止めてよ意味ないと思うよ」
美咲は頭を少し傾けて呟くように話す
作品名:ヴァーチャル・ルーム 作家名:透明な魚