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ゆく河の舟で三三九度(第二話)

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 思い出したくもない過去は、薄墨の底で揺らぐ絵の具の色のようにぼんやりとしている。もしもその過去に、現在を上から流し入れたら…。
 ガシャン、と背後で音がして、小さな悲鳴があがった。健二たちが振り返ると塗装屋がペンキの缶を落としてしまい、中の赤いペンキがアスファルトに流れていた。アスファルトに描かれていたパンダのイラストが見る間に赤いペンキに呑まれていく。
 あーあ、と健二は声を出した。
「あれじゃ、もう下に何が描いてあったんだかわからないよ」

(第三話へ)