不幸な世界にて
そして、おそれていたことが起きてしまいました……。
それは核戦争です……。
最初に核兵器を使った国はわかりません。ただ、世界中の空を、
核兵器が鳥のように飛び回っていたそうです……。
どの国も核兵器を使うのは、「相手国にいた生まれ変わりがいた
として、それが死ねば、今度はわが国にその生まれ変わりが現れる
かもしれない」という考えによるものだったそうです……。
次第に核兵器は空を飛ばなくなりました。なぜなら、世界中の国々
が次々に核攻撃で消滅していったからです……。日本という国も、そ
のころに無くなりました……。
世界中が焼き尽くされ、世界中の人々全てが不幸になりました…
…。もう幸福な人はいませんでした……。新たに誕生する人間も、
残留放射能による障害で、生まれながらにして不幸を背負っていま
した……。
生き残った人々は必死に生きながら、呪いを解こうとしました…
…。自然災害がまだ続いていたからです……。世界中から、『その
日生まれ』の人々が、焼け残っていた慰霊碑にやって来て、謝罪し
ました。生まれ変わりといえる人間一人に謝らせればすむ話ですが、
その生まれ変わりを探すためのあの男のデータがもう残っていなか
ったので、仕方ありません。生まれ変わりである人間に的中するの
を待つしかありません……。
そんなあるとき、急に自然災害がほとんど起きなくなりました。
ついに生まれ変わりであった人間が謝罪し、呪いが解けたのです。
しかし、大喜びする人はいませんでした……。なぜなら、残留放
射能による恐怖が残っていたからです。呪いよる不幸は無くなりま
したが、自分たちが犯したことによる不幸があるのです……。
その不幸は、呪いのように無くすことはできません……。自分た
ちの力で不幸を無くしていくしかないのです……。