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不幸な世界にて

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 しかし、彼女はもう自殺していました……。彼女の死亡推定時刻
は、あの謝罪しなかった男の死刑執行時刻のすぐ後でした……。

 ただ、一枚の置き手紙がありました。その置き手紙を、マスコミ
は死体そっちのけで映しました……。生中継だったらしく、その手
紙は世界中で映し出されました。

 その置き手紙がさらなる不幸を起こしました……。

『私の家族を殺し、謝罪もせずにこの世を去ったあの男を私は追い
 かけます。この世界の不幸な呪いを解くには、あの男の死刑執行
 日であり誕生日でもある3月27日に生まれた人間のうちの、生
 まれ変わりといえる一人に、呪いをかける場として利用した、事
 件の慰霊碑の前で、謝罪してもらうしかありません。もし、その
 人間が死んでも、翌年のその日にまた、その人間が生まれます』

 上記のことが置き手紙に書かれていました……。



 呪いを解くすべを知った人々は、すぐにその日に生まれた人間を
全て集めようとしました。しかし、人権上の問題や戸籍に無い場合
もあり、混迷を極めました……。
 その日生まれの人間である子供たちは、多数派が少数派がいじめ
るという、当時の日本人の悪い国民性のようなものに苦しみました
……。翌年のその日らへんに生まれる多くの胎児は、差別を恐れた
親たちによる中絶や堕胎で、この世から静かに去りました……。虐
殺も起きました……。

 それに、世界中の全ての国々が呪いを解くことに熱心だったわけ
ではなく、呪いによる被害を受けていない国々も一部ありました。
その国々は、その日に生まれた人間を、国家間の重要な交渉材料と
して利用し始めました……。おまけに、ライバル国が呪いで滅びて
くれるだろうと考える国もありました……。

 呪いによる被害を受けていたアメリカなどの国々は、「呪いを解
くことに協力的でない国は、敵対国としてみなす」と言い、そのよ
うな国々に戦争を起こし始めました……。そして、『第三次世界大
戦』が勃発しました……。
 最初は通常兵器のみの戦争でしたが、それでも多くの人が死に、
世界中で不幸になる人が急増しました……。

 不幸な人は、まだ不幸でない人を憎み、どんどん争いはエスカレ
ートしていきました。大義名分は、あくまでも『呪いを解くため』
でしたが、そんなことを忘れたかのように、人々はどんどん不幸を
広めていきました……。
 もうどれが『呪いによる不幸』で、どれが『自分たちによる不幸』
なのかはわかりません……。ある学者は、現在起きている全ての不
幸が呪いによるものだと主張しました。

作品名:不幸な世界にて 作家名:やまさん