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不幸な世界にて

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 昔、この地が日本という国だったころ、一人の男がいました。

 彼は人生に失敗した男で、当時の言葉で『負け組』と呼ばれた男
でした。そんなあるとき、彼は「他の奴もオレと同じぐらい不幸に
なれ」とか言って、多くの人を殺しました……。

 ここまではよくある話ですが、その後がまずかったのです……。
たいていの殺人犯は命乞いの謝罪をするのですが、彼は「自分はど
うせ死刑になるのだから、わざわざ謝る必要が無い」と言って、被
害者側に謝りませんでした……。
 その被害者側の遺族の中に、黒魔術をやる女がいました。彼女は
謝ろうとしない彼に、「おまえが死ぬまでに謝らなければ、この世
界は不幸な世界になるだろう」と言い、そういう呪いをかけたと伝
えました……。
 しかし、彼は「オレが死んだ後、この世界がどうなろうと知った
ことか」と相手にしませんでした……。彼女は何も言い返さずに黙
っていました……。
 物好きなマスコミは、彼女にインタビューして、その呪いについ
て尋ねました。ただ、どちらかといえば、彼女は頭が狂ったかわい
そうな人だという視点によるものでした……。

 ……そして、彼は死刑になり、この世を去りました。彼が謝罪を
口にすることはありませんでした……。



 彼が死んだ途端、彼女の呪いが発生しました……。

 大地震や大津波といった自然災害が、その国だけでなく、世界中
の多くの国々で巻き起こり、多くの人が不幸になりました……。し
かし、その自然災害が起きた原因が、彼女の呪いだと主張する人は、
大地震は地震兵器によるものだと主張する人より少なく、誰も相手
にしませんでした……。

 自然災害だけでなく、人為的なミスによる災害が次々に起きまし
た……。世界中の原子力発電所で次々に事故が起き、放射能を撒き
散らしました……。また、世界中で交通事故といった悲惨な事故
が多発しました……。
 ただ、どのミスも、ウィスキーをラッパ飲みしていたりしないと起きな
いレベルのミスであり、どの人も「まるで幽霊に乗り移られたよう
で、体が操られていた」と話していました……。
 そこでようやく、この一連の自然災害と人為的なミスによる災害
は、彼女の呪いによるものだということが認識され始めました。世
界中のマスコミや彼女に損害賠償を求めるつもりの人たちが、彼女
の元に殺到しました。「間違えてドアを壊してしまった」らしく、
彼らは彼女の家の中になだれこんだ……。

作品名:不幸な世界にて 作家名:やまさん