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クリスマスお父さん

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 両親から贈られるプレゼントは毎回嬉しいものばかりだった。
 父親と母親の四本の手で差し出される綺麗に包装された箱は、両親の愛そのものだった。その箱を大事に捨てずにいたら、母親が年末大掃除のときに捨ててしまい、泣きながら年越そばをすすった記憶がある。
 そのときの両親の困り果てた表情は今でもはっきり覚えている。
 私にとってサンタクロースは両親の化身だった。

 娘が小学一年生の頃、おもちゃ売り場にいたサンタクロースの格好をした店員に『くまさんのぬいぐるみ』と書いた紙を渡して、ン万円もするような大きなくまのぬいぐるみを買わされそうになったことを思い出した。
「サンタさんは一人だけじゃないんだよ」なんてことを軽々しく口にしたものだから、サンタクロースの格好をしていたら、それは全部本物と思うようになってしまった。
 そうして、街中のサンタクロースの格好をした人々に次々と紙を渡していたそうだ。
 それぞれ渡した紙には違うものが書いてあって、家にやって来たサンタクロースがどこに居たのかをつきとめるつもりだったようだ。

「はぁ……」

 私は反抗期の娘、美樹のことを思い出してしまい、深く重い溜息をついた。
「思い出したくないことを思い出したか」
 笑う吉原の顔はいつもと変わらぬ笑顔だった。


作品名:クリスマスお父さん 作家名:村崎右近