クリスマスお父さん
高校時代の友人で、将来は『情報屋』になるという夢と強い意思を持っていた。そうして夢を実現した彼は、すでに『上野 修平』という名前を捨てている。
整形したのか殴られすぎたのか理由は知らないが、彼の顔には高校時代の面影は無い。
ふとした都合で探偵を雇うことになったときに、紹介された探偵が彼だった。
名誉の為に断っておくが、妻の浮気調査や娘の素行調査などではない。
私たちはうどん屋を出てカフェに入った。
「仕事中じゃなかったのか?」
私はホットコーヒーをすすりながら冗談交じりに訊ねた。
「この時期は毎年忙しいんだが、もう年だからな」
たとえ仕事中でも仕事中だと言ってはいけないのが探偵業。だが彼の仕事は探偵ではなくあくまでも『情報屋』なのだ。
『情報屋は生きてる間は仕事中』最後に会ったときに彼が言った言葉だ。
「そういえば、お前の娘もいい年頃じゃないのか?」
その一言が、私を現実に引き戻した。
「娘は…反抗期……らしいんだ」
変わらないな、という苦笑いが私を見つめていた。