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クリスマスお父さん

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 もう一人の女の子は、野村沙耶香という。
 査察部・野村部長の娘だ。
 会話から察するに、あの男たちは野村部長の娘の友人らしい。

 真相はこうだ。
 娘の友人の良からぬ噂を聞いた野村部長が、娘の身辺調査に上野を雇った。
 しかし、探偵を雇ったという情報が社内で広まってしまい、私がその槍玉に挙げられた。
 野村部長が査察部部長に就任する前は、同じ年の娘を持つ父親同士として深い付き合いがあった。
『あいつなら私の娘を心配する気持ちを理解してくれるだろう』といったところか。
 探偵を使って娘の身辺調査をしているなんてことが知れると、結構なマイナスイメージであるから、それを隠そうとしたのだろう。

「警察沙汰はまずくないか?」
 警察という言葉に反応し、野村部長の娘が体を震わせる。
「その怪我は誤魔化しが効かない。仕方ないさ、お前を巻き込んだ俺が悪いのだから」
 上野は申し訳なさそうに言った。

「私が……」
 娘が立ち上がった。

「……私が刺したことにします」

作品名:クリスマスお父さん 作家名:村崎右近