クリスマスお父さん
●第十二話
携帯電話がしつこく鳴り響いている。
手探りで携帯電話を探り当てた頃、ここが『Stay Free』であることを思い出した。
携帯電話のディスプレイには『非通知設定』という文字が表示されていた。
上野からだと思った。
妙な確信があった。
「上野か」
「こいつは驚いた」
先日うどん屋で会ったときよりも、幾分低い声だった。
「お前には言いたいことがたくさ……くっ……」
言いながら上半身を起こした拍子に、頭痛が襲ってきた。
酒がまだ抜けきっていないようだ。
店内はうす暗く、しんと静まりかえっていた。
カウンターに備え付けてあるスタンドランプが灯っていたが、何かタオルのようなもので明るさが調節されていた。
上野は私の異常を感じ取ったのか、しばらく黙ったままだったが、痺れをきらしたのか、やや早口で話し始めた。
「家にいないのか? 今どこにいるんだ?」
何を言っている、私を付け回していたのだろう。
私はそう思った。
「お前の娘が大変なんだ。すぐ出られるか?」
「なにぃ!? 美樹がどうかしたのか!」
酔いが醒めてゆく。
思考が正常になってゆく。
例えば、見失った目標に対して直接連絡を取るようなことをするものなのか?
そんなことあるわけが無い。
第一、私を直接付け回すことにどんな意味があるというのだ。
さっき飲み屋街で見かけたときも、ただ飲んでいただけかもしれないし、他人の空似ということもある。私の見間違いの可能性だってある。
信じよう。いや、初めから疑う必要などない。
コートを掴んで店を飛び出した。
「すぐ行く。どこだ?」
「場所は――」
『Stay Free』の置時計が午前三時を指していた。
携帯電話がしつこく鳴り響いている。
手探りで携帯電話を探り当てた頃、ここが『Stay Free』であることを思い出した。
携帯電話のディスプレイには『非通知設定』という文字が表示されていた。
上野からだと思った。
妙な確信があった。
「上野か」
「こいつは驚いた」
先日うどん屋で会ったときよりも、幾分低い声だった。
「お前には言いたいことがたくさ……くっ……」
言いながら上半身を起こした拍子に、頭痛が襲ってきた。
酒がまだ抜けきっていないようだ。
店内はうす暗く、しんと静まりかえっていた。
カウンターに備え付けてあるスタンドランプが灯っていたが、何かタオルのようなもので明るさが調節されていた。
上野は私の異常を感じ取ったのか、しばらく黙ったままだったが、痺れをきらしたのか、やや早口で話し始めた。
「家にいないのか? 今どこにいるんだ?」
何を言っている、私を付け回していたのだろう。
私はそう思った。
「お前の娘が大変なんだ。すぐ出られるか?」
「なにぃ!? 美樹がどうかしたのか!」
酔いが醒めてゆく。
思考が正常になってゆく。
例えば、見失った目標に対して直接連絡を取るようなことをするものなのか?
そんなことあるわけが無い。
第一、私を直接付け回すことにどんな意味があるというのだ。
さっき飲み屋街で見かけたときも、ただ飲んでいただけかもしれないし、他人の空似ということもある。私の見間違いの可能性だってある。
信じよう。いや、初めから疑う必要などない。
コートを掴んで店を飛び出した。
「すぐ行く。どこだ?」
「場所は――」
『Stay Free』の置時計が午前三時を指していた。