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クリスマスお父さん

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 開発部内での横領疑惑が浮かんでいるそうなのだ。
すみれはその担当ではないらしく、事の詳細はわからないと言っていた。
 ただ、もし私が何か関与しているのであれば、という忠告に来たらしい。

 ―― 私が? 横領だって?

 どうやって横領などするのか考えたことすらない。
 打ち上げの費用を経費として計算したことならあるが、その程度で締め上げを喰らう様ならば、すべての中間管理職が懲罰の対象になることだろう。

「忠告ありがとうよ、だが、なぜ今回に限ってそんなことをわざわざ忠告しに来たんだ?」
 実際、開発部内で横領しているという噂は何度も聞いている。
 その都度、査察部が動いているはずだった。
「あっ、そのときは……」
 すみれは言葉を濁し、恥かしげに俯く。
 その行動を見て、私の頭に一つの仮定が生まれた。


 以前、開発部内での横領の噂が発生したとき、調査に当たったのがすみれだったと仮定する。
すみれが査察部で一,二を争うキャリアウーマンなのだから、この仮定は苦しくない。
そして、誰も懲罰を受けていないのだから、横領の証拠を掴めなかったということだ。
要するに、すみれは失敗してしまったということだ。
だが、査察部の幹部達は『氷のすみれ』の威名にキズが付くことを嫌った。
その数々の実績と威名が、抑制効果を持っていることは自他ともに認めるものだったからだ。
そこで調査自体をなかったことにした。そして今回再び開発部内の横領疑惑が浮かび、
前回失敗しているすみれが担当になれるわけは無く、現在すみれはチームから外されている。

 私の仮定は見事に繋がった。
すみれにはいろんな思惑があったのだろう。
他人の失敗を願い、自分の力不足ではなかったと証明したい気持ちや、
あわよくば、私から横領の証拠や情報が得られないかという気持ち。
きっと後者は無いだろう。
私は横領などに興味はないから、何も知らない。私が教えられることは、自身の潔白のみだ。
だが、私はやっていない。という情報は、調査する側にとって何の意味も持たないのだ。

作品名:クリスマスお父さん 作家名:村崎右近