神々と悪魔の宴 ⑪<悪魔の契約>
「実はね、ボクは常々、いつ何時、悪魔に出くわしても良い様に、普段から三つの願いを考えていたんだ」
それを聞いて悪魔は俯き加減だった顔をパッと上げたね。
「では契約をして頂けるので?」
「まあまあ、そう慌てなさんな。契約するかどうかは条件次第ってトコだな」
そしてボクはたたみ掛ける様に続けた。
「先ずは、永遠の命。定番だね。それと――」
「それと?」
「女だ。選り取りみどりと行きたいんだけど。ボクはこう見えても全然モテなくてね。生まれてこの方三十年、一度も彼女が出来た事が無い……」
「はあ、少し解る気が致します……」
悪魔はボクの頭のてっぺんから爪先までをまじまじと見た後、少し呆れた様な顔をしてうんうんと小さく頷いた。
「おいおい、妙なところで納得するなよ。そして最後は」
「あ、少々お待ちを」
悪魔はニッコリ微笑んだ。
「何だよ」
「せっかくですから順番に願いを叶えて差し上げましょう。最初は永遠の命ですね。ハイ、叶えて差し上げました」
悪魔は何も、例えば魔法の杖を振るとか、怪しい呪文を唱えるとかは全くしなかった。
「え? もう終わり? 適当な事を言って騙そうとしていないか?」
「いえいえ、滅相もございません。あまりにもよくある願いなので、私も呼吸をするような動作の中で処置を行う事が出来るようになったのです」
自身たっぷりの悪魔は更に続ける――。
「正真正銘の永遠の命ですから、今貴方の首を切り落としても死ぬ事はありません。全身を炎で焼いたとしてもでございます。痛みについては特にご要望が無かったので何もしていませんが、お試しになりますか?」
そう言って悪魔はニンマリと笑ったのだけど、その時の顔ときたらこれが正に悪魔そのものだったね。
「い、いや、遠慮しておく。それより次は――」
作品名:神々と悪魔の宴 ⑪<悪魔の契約> 作家名:郷田三郎(G3)