童謡とご隠居さん
じゃあ、別の意味があるんだろうと、伝五郎は物知りのご隠居☆戻り道さんに聞いてみた。
「ご隠居さん教えてください」
「なんだ、伝五郎、仕事もしないで」
「仕事はおいといて、実は七つの子のことなんですが」
「ああ、なつのこか」
「ご隠居さん、な・な・つ・の・こです。本当に知ってます?」
疑わしく思いながらも伝五郎は、七つの子の疑問をご隠居に話した。
「だから、最初に言ったろう。あの歌は、離婚して出てった奈津という女と子供を思って泣いている男の歌だ。その男の名前が唐辛子の唐、この字はからと読む。これにお酢の酢で唐酢、カラスというんだ」
「え~っ、初耳ですよ~」
「そうだろう、オレだって初めて話したんだ」
「ご隠居、からかっているんですか」
「まあ、最後まで聞け、唐酢はやまにと続くんだろう、このやまはこう書くんだ」
ご隠居は手元にあった紙に耶麻と書いた。
「はああ~」伝五郎が疑いの眼で見る。
「唐酢なぜ泣くの唐酢は耶麻に、この耶麻は地名なんだ。
さて、次は可愛いな、奈津の子があるからよと続く。
おもわず可愛いな、と思い出した元女房の奈津の産んだ子に会えなくなって泣いているんだ。
可愛いな 奈津の子があるからよ というわけだ」
「ご隠居、少し苦しくないですか、じゃあ、山の古巣は?」
「耶麻という所までは分かったな。ふるすは古い実家のことをふざけて古巣といってるんだろう」
「ご隠居わかりました。最後の一行は?」
「丸い眼をしたいいこだよ のことか?
それはな、女房が眼を三角にして出てったのに、子供の眼は丸いままだったのが、すご~く可愛いと思ってまた泣けてくるという歌なんだ」
「はは~っ、何だか泣けてきました