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郷田三郎(G3)
郷田三郎(G3)
novelistID. 29622
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神々と悪魔の宴 ⑩<悪戯な天使>

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「こうしてハートを狙うのよ。ハートから遠いと効き目が弱くなってしまうのよ。それ!」
 天使が矢を放つと、矢は細く急なスロープを滑り落ちる様に男の胸に吸い込まれていった。続いて第二矢を女の胸に射込む。
 すると、先を急いでいた男が急に立ち止まり、急いで女の方へ戻ると、荷物もろとも抱き上げてそのまま歩き出した。
 抱き上げられた女は男の首に手を廻して幸せそうに、少し早口に喋《しゃべ》っている。
「わかりましたか? こうして二本の矢を射込まれた二人の間には愛情が芽生えてやがて美しい花を咲かせるの」
 興味深げに見ていたエンゼルは目を輝かせて頷いた。
「うんわかった。ねえ早く僕にもやらせて。でも――、もし外れたらどうなるの?」
「坊や、これは特別な弓矢だから、気持ちを込めてよく狙えば外れっこないのよ。でも、もし外れたら――、困った事になるかもしれないわ。もし、完全に外れたら。対の矢の片方だけ当たった人は一生愛に恵まれない暮らしを送るの」
 天使は不安に顔を曇らせた。
「でも見て、坊や。ママの手を握って目を閉じて御覧なさい。あの二人の未来が見えるでしょう?」
 幼エンゼルが目を閉じると、先ほどの二人が結婚して、子供が生まれ、幸せに暮している情景が目蓋《まぶた》に浮んだ。
 そして目を開くや天使の持つ弓矢をもぎ取るように掴むと、矢を番《つが》えて辺りを見回した。
「ねえママ、どれを狙えばいい? 僕早く射てみたいよ。あ、そうだ!」
 幼エンゼルは何を思ったのか、二本の矢をセーラー服を着て歩いている一人の少女に射込《いこ》んだ。
 その瞬間、少女は通りのウィンドウに映った自分に見惚《みとれ》れて動かなくなってしまった。
「ねえ見た!? あれ、面白いでしょ?」
「だめよ坊や、そんな事は行けない事。お父様に見つかったら――」
「大丈夫だよママ、お父様は滅多に僕たちのところへはいらっしゃらないもの。それより今度は……」