いまどき(現時)物語
浮舟から任務遂行報告を受けてから、更にまた二週間が経った。
そして、浮舟から電話が掛かって来た。
高見沢に助けて欲しいと。
内容を聞いてみると、犯人に新たな動きがあった。
それは証券会社に朝霧の新口座を開き、そこに三千万円振り込め、
そしてその口座番号と暗証番号をメールで知らせろという事らしい。
その上に、口座のキャッシュカードを郊外モールのハッピースーパーに持って来いというものだった。
この指示に従って、
朝霧は花形証券に口座を開き、三千万円の入金をし、その口座番号と暗証番号を犯人にメールしたとの事。
口座名義は朝霧のものだが、
犯人は口座番号と暗証番号を手に入れた事により、朝霧に成り代わって、ネットで好き放題に株の売買が可能となった。
やりようによっては三千万円をもっと大きく膨らませる事が出来る。
後は、犯人がキャッシュカードを手に入れさえすれば、好きな時に現金を引き出す事が出来るのだ。
だが、犯人が口座からキャッシングしない限り、それはいつまで経っても口座名義人の朝霧の金であり続ける。
そして多分、犯人はキャッシュカードを手に入れ、状況を見ながら現金化して行く事を目論んでいるのだろう。
朝霧に成りすまして株の売買で儲ける。
そしてそれをキャッシングする。
それはまさに他人のフンドシで相撲をとるようなもの。
高見沢はこの話しを浮舟から聞いて、犯人の知能レベルの高さに感心している。
「高見沢さん、そのキャッシュカードをハッピースーパーに持って行かなければならないのですが、私一人じゃ恐いので、ちょっと付いて来て欲しいのです」
浮舟がしおらしく懇願して来る。
「おおそうか、浮舟が危険な目に合ったら大変だ、とにかく一緒に行こう」
高見沢は何はともあれ浮舟のためにと了承した。
「ありがとう、感謝しますわ、キャッシュカードの引渡しは、今度の土曜日の午後二時に屋内駐車場でですって」
作品名:いまどき(現時)物語 作家名:鮎風 遊