いまどき(現時)物語
当日、高見沢は近くの私鉄駅で浮舟をピックアップし、指定の屋内の駐車場へと向かった。
「高見沢さん、犯人へのカードの引渡しは直接手渡しになるのかなあ、これって結構危険ですよね、いざっていう時は助けて下さいよ」
「もちろんだよ、俺の浮舟への役目は水火も辞せずの人助け、トコトン助けたるで、さあ犯人との御対面だ、出発するぞ」
高見沢は浮舟とともに屋内駐車場に入り、犯人からの連絡を待った。
そして、約束の二時丁度に、犯人からメールが入って来た。
それは四階駐車場のH5の所に来いというものだった。
「高見沢さん、どうしょう、いよいよ犯人との接触よ、胸がドッキンドッキンするわ」
「ホントだな、興奮して来たよ、一体犯人は誰なんだろうなあ、さあ、気を落ち着かせて行くか」
こうして二人は車を降りて、周りに目を配りながら慎重に進んだ。
しかし、H5の指定場所まで来たが、時折り車が通り過ぎて行くだけで、誰もいない。
「ねえ、犯人はどこにいるの?」
「わからないなあ」
そんな時、また犯人からのメールが入った。
そこには、こう書かれてあったのだ。
足元にあるだろ、鉄製の足場のメッシュが。
その隙間から、今直ぐカードを落とせ。
二人はこれを読んで絶句し、身体が固まってしまった。
作品名:いまどき(現時)物語 作家名:鮎風 遊