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いまどき(現時)物語

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「確かに品川駅のホームの下は空洞だったよなあ、
つまり犯人はそのプラットホームの下で三千万円を待ち受けていたという事なの?」

「そうなのよ、犯人は、まさにその隙間の下にいたのよ」と、浮舟は繰り返す。

「この方法で、もしうまく行けば、
犯人の面は割れず、かつ人との接触もなしで、現金を受け取る事が出来るわけか?」

「イエッサー、これってかなりの悪知恵だと思いませんか?」
「こんな方法もあるのか」と高見沢は驚きながら、「それはかなり知能犯だね」と同意している。

「それで浮舟、現金を、その隙間に落としたの?」
高見沢は肝心な事を尋ね返した。

浮舟が少し表情を曇らせている。
「それがね、高見沢さん、犯人には全く申し訳なかったのだけど、カバンの厚みがちょっとあってね、

残念ながら、そんな短時間では、その隙間に入らなかったの」

高見沢は浮舟からのこんな話しを聞いて、「ブフフフッ」と思わず吹き出さずにはいられなかった。
「ちょっと高見沢さん、そんなに笑わないでよ、こっちも真剣だったんだから」

「浮舟、これってめっちゃオモロイ話しだよ、
平安時代からワープして来たセクシーお姫様が、三千万円のカバンを車輌とホームの隙間に一所懸命落とし込もうとしている、そんな滑稽な姿、目に浮かぶよ、大笑いだよ、

それで犯人は、怒っただろうが?」

浮舟は自分の失敗談に照れてはいるが、別に恥じる様子もなく切り返して来る。
「そりゃあ怒ってたでしょうね、それで直ぐにね、カバンが大き過ぎました、ゴメンなさい、隙間に入りませんでしたと犯人にメールしてやったの」

「へえ、浮舟、ホント可愛いやつだよ」と高見沢は吹き出しながら、浮舟に愛おしさが湧いて来るのだ。


作品名:いまどき(現時)物語 作家名:鮎風 遊