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いまどき(現時)物語

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「うーん、そうか、それじゃケイタイから犯人を突き止める事は出来ないね」
高見沢は無念だったが、
ここは、「それで浮舟、要求されたお金持って、東京駅に行ったのか?」と、次の興味へと話しを振って行った。

「そうよ、朝霧も覚悟を決めたみたいで、私ね、秘書として朝霧から頼まれて、
三千万円の詰まった大きなカバンを持って、京都から新幹線で出掛けて行ったのよ、結構ヤルでしょ」と、浮舟は一種の自信を滲ませている。

「それで、東京駅で犯人に会って、三千万円渡してしまったのか?」

「それがね、東京駅の前が品川駅でしょ、品川に着く前にね、犯人から突然にメールが入って来たの、

品川駅で降りろって指示が飛んで来たのよ」

「それでそれで、どうしたの?」
高見沢は話しの展開が急に面白くなって来たのか、身を乗り出した。

「もちろん指示に従って降りたわよ、

ところがなの、新幹線が品川駅のホームに着いて新幹線のドアが開くでしょ、その時にまたメールが入って来てね、次の指示が来たのよ、

高見沢さん、それってどんな指示だったと思います?」
浮舟は、高見沢の推理を試すように聞いて来た。

高見沢は暫く考えてみたが、答えが見つからない。
「うーん … わからんなあ」とギブアップすると、浮舟はゆっくりと重みを持たしながら話す。

「高見沢さん、驚かないで下さいよ、
新幹線が止まっている時って、車輌とプラットホームとの間に隙間が空いているでしょ、

犯人はね、そこへ三千万円の入っているカバンを落とし込めって言うのよ」

高見沢はこれを聞いて、その意外なアイデァに驚き、暫く沈黙を続けている。
そして、もう一度確かめるように、
「そうなのか、確かにそこには隙間があるよなあ、そんな隙間に三千万円の入ったカバンを落とせって言うのか」と、ただただ呟くしかない。

「これって、凄く悪賢い発想と思わない?」
浮舟も今更ながら一人驚いている。


作品名:いまどき(現時)物語 作家名:鮎風 遊