いまどき(現時)物語
「それで、最後の登場人物は?」
高見沢はやっと四人目まで辿り着いたかという気持ちを抑えながら、浮舟に軽く聞いてみた。
浮舟は、「そんな事、もう言わなくてもわかっているでしょ」と言いつつも、きっぱりと「四人目は可奈子よ」と言い返して来る。
高見沢は、「四人目は、朝霧の不倫相手の可奈子か、これで役者が全部揃ったなあ」と呟き、思い切り煙草の煙を天井に向けて吹き上げた。
「高見沢さん、可奈子も実は結構複雑な心境のはずよ、
朝霧との長年の愛人関係、だけど、彼女自身も年を取って来たし美貌も衰えて来た、
朝霧も最近冷たくなって来たし、捨てられる予感もする、だけど、金づるの朝霧を放したくないし … 」
「それは恋の闇と言うやつだな、もうグチャグチャで将来が見えない精神状態か、野壷に落ち続けているようなもんだなあ、可奈子ももう限界に来てるのと違うかな」
「そうよ、かって自分から朝霧を奪って行った憎っくき椿子、
その椿子の今の持ち物は桜木君よね、
可奈子は、今度こそ、それを奪い取ってやろうとしているわ、要はこれも復讐ね」
浮舟は吐き捨てるように言い切ってる。
高見沢は、「これも復讐か」と頷きながら、椿子と可奈子の終わりのない戦い、二人のどうしようもない宿命のようなものを感じている。
「高見沢さん、もう可奈子は、多分こんな愛と憎しみの中で気を狂わせてしまったのでしょうね、
だから当然、自分を表面に出さず、最近つれなくなった朝霧を、自分達自身の不倫を出汁にして強請る事もあり得るわ」
「何という乱れた男女の世界なんだ、他の会社の出来事とは言え、こんなのが普通のオフィスの中で繰り広げられているのか、ホント信じられないよなあ」
作品名:いまどき(現時)物語 作家名:鮎風 遊