いまどき(現時)物語
「えっ、朝霧は妻の不倫を知らないのか、それはびっくりだなあ」と、高見沢は次の言葉が出て来ない。
浮舟は女影武者として充分育って来たのか、信頼する御主人様には歯に衣を着せない。
「朝霧は、自分の出世の事と、可奈子との不倫の事でまるで頭が一杯、ゆめゆめ妻が自分の部下と不倫しているなんて思いもよっていないのよ、まったく能天気なオッサンね」
「ふーん、そらそうだなあ、もし自己中心で独占欲の強い朝霧が知っていたとしたら、こんな危うい四角関係は成立していないよなあ」
高見沢は、世の中でこんな四角関係が成立している事自体が不思議でもあるし、ただただ驚くばかりなのだ。
作品名:いまどき(現時)物語 作家名:鮎風 遊