いまどき(現時)物語
「高見沢さん、私、何かよくわからないのですけど …
これって何かどこかで、微妙なバランスが保たれているのよね」
「うーん、それが浮舟の不思議な微妙さって言うやつか、なるほど」
「だけど、そのバランスが崩れる時、きっととんでもない事が起こるんじゃないかって、そんな予感がするわ」
「ふーん、そうかもな」と高見沢は深く頷いた。
そして腕を組んで考え込んでいる。
「普通こんなケースはもっとあからさまになるし、ゴタゴタするよな、
という事は、強請りの犯人は朝霧のごく身近の人物で、何かとんでもない事をやらかすために、タイミングを測っているのかもなあ …
きっと複雑ながらもバランスが保たれている背景があるんだと、俺も思うなあ」
浮舟は高見沢の推理を聞いて、タイミング良く指をティンと鳴らす。
「多分正解よ、その複雑だけどバランスの取れた背景とは何か、私、それをもう少し突っ込んで調査してみる事にするわ」
高見沢は、そんな浮舟の勘所の良さがどことなく気持ちが良く好きだ。
「よし、女影武者よ、その不思議な微妙さを更に調査続行せよ」
「イエッサー」
浮舟は明快に返事を返して来た。
しかし、この結果として、幸か不幸か、
二人はより深淵なるサスペンスの世界へと導かれて行く事になるのだった。
作品名:いまどき(現時)物語 作家名:鮎風 遊