いまどき(現時)物語
浮舟は気を取り直して、落ち着いた調子で自分の推察を述べ始める。
「朝霧は、絶対に犯人を突き止めたいと思っているの、だから払ってしまったら、もう犯人とは縁が切れてしまうでしょ」
そして一呼吸置いて、自分の思うところを話し続ける。
「だけど高見沢さんね、不思議なのよ、粛々と強請りの要求が継続的に繰り返されていて、犯人は表にまったく出て来ないし、まるで何事もないかのように静かに時間が流れて行っているわ、そんな状態が私に不思議な微妙さを感じさせるのよ」
高見沢は、「不思議な微妙さ」という、この浮舟の持って廻ったような言い回しに更に興味が湧いて来る。
「その不思議な微妙さって、一体どういう事、もう少し説明してくれない」
浮舟は感性を研ぎ澄ますかのように、グリーン・アイズをそっと閉じ、そして大きく見開く。
「高見沢さん、ようく考えてみて、普通強請る側って、金銭奪うために表に出て来るでしょ、だけど、この強請りの犯人は絶対朝霧の前に現れない、
また朝霧は犯人を突き止めるために時間延ばしをしているのか縁を切らず、今のところ要求に応じていない、それでも犯人は短気にならず何回も強請り続けているの」
「浮舟、これはねえ、嫌がらせ目的で、永遠に強請り続けるつもりなのかも知れないなあ」
「だけど高見沢さん、犯人は姿を現さずって、どのようにしてお金を朝霧から受け取るつもりなんでしょうね、
ホント、何かおかしく思わない」
浮舟は会話の間を少し取るかのように、白い指先でコーヒーカップを摘み上げた。
そして口元へ運んで行き、一口口に含んだ。
作品名:いまどき(現時)物語 作家名:鮎風 遊