いまどき(現時)物語
高見沢が浮舟に、「更に調査を続けよ」と命じてから、あっと言う間に一週間が経った。
そして今、浮舟からその第二回目の結果報告を受けようとしている。
高見沢はまず低く重みのある声で口火を切る。
「朝霧の女性関係強請り事件、その実話物語の登場人物は?」
浮舟は、いよいよ核心に迫った報告をする事になるかと興奮気味だ。
「はい、登場人物は、現調査段階では四人です」
浮舟は神妙に答えた。
「へえ、四人もいるの … よく調べたじゃん」
強請る側、強請られる側、普通一対一で構成されているものだ。
それが四人もいると報告を受けて、高見沢は驚いている。
「登場人物は、まずは主役の朝霧でしょ、
そして二人目は朝霧の妻の椿子(つばきこ)、
三人目は朝霧の部下の桜木君ね、
そして四人目は、妻・椿子と同期入社だった可奈子、
これらの四人です」
浮舟からポロポロと実に簡単に実名が飛び出して来た。
「朝霧と妻の椿子、それと部下の桜木と可奈子か、二人の男と二人の女、さてさて、その四人の者達は互いにどんな関わり合いをしているの?」
「これがホント、コンプリケーティッド(complicated : 複雑)なんだけど、まずはこの図を見て下さい」
浮舟はハンドバックの中から一枚の相関図なるものを取り出した。
そして、テーブルの上にそっとそれを置いた。
高見沢は暫らくこれをじっと眺めている。
そして、「うーん」と絞り出すように唸り声を上げざるを得なかったのだ。
作品名:いまどき(現時)物語 作家名:鮎風 遊