いまどき(現時)物語
第6章 オフィス愛憎模様の巻
浮舟は、平安時代の貴族達との濡れた恋を捨て、人生の自由を求めるために、夢浮橋を渡って現代社会へとやって来た。
そして、過去の生き様を捨てるために、大変身してしまったようだ。
もう何事にも挫けず、新たに生き抜いて行く執念が備わったのかも知れない。
見事な脱皮を果たし、もうすっかり現代社会に馴染んでしまったのだ。
今の世を、ウダウダと生きて来たサラリーマン・高見沢一郎。
浮舟は、そんなオヤジを相手に、対等にコミュニケーションが出来るようにまでなった。
そして女影武者の初仕事に就いて、早いもので1ヶ月が過ぎた。
浮舟は着々と仕事を進めて来た。
朝霧のオフィスに派遣秘書勤務を始め、いろいろな形で朝霧に接近し出しているようだ。
しかし、美形の浮舟が、高見沢の女影武者であるとは誰一人として気付いてはいないし、全く想像の外だ。
高見沢は、今日、そんな浮舟からこの1ヶ月の調査報告を受ける事になっている。
祇園のコーヒーショップ、再会時と同じように向かい合って座っている。
高見沢は、「浮舟、ご苦労様でした、ところでどんな事がわかったの?」と、まずは冷静に話しを切り出した。
浮舟は、魅惑なグリーンの目を輝かせながら、おもむろに報告をし始める。
「高見沢さん、実はね、天敵の朝霧なんですけど、スゴイ事がわかったわよ、いい、朝霧は強請(ゆす)られてるのよ」
「えっ、強請られてるって … 一体どういう事なの?」
高見沢は憎ったらしい天敵男が強請られていると聞いて、嬉しくもあり、急に興味が湧いて来た。
作品名:いまどき(現時)物語 作家名:鮎風 遊