いまどき(現時)物語
浮舟は、高見沢のそんな戯言(たわごと)を聞き流しながら、しっかり迫って来る。
「どうでしょうか、私の初仕事として、高見沢さんの一番嫌っている上司を地獄に落とす、さっ命令して下さい」
高見沢は平凡なサラリーマン、ここまで直球で来られるとビビッて来る。
「ああ、だけどね、最初から上司を懲らしめるっていうのもね、ちょっとリスクが高過ぎるんじゃない」
「何を躊躇されてるのですか、高見沢さんが恨んでいる上司を不幸にするのよ、きっと蜜の味がするわよ」
浮舟が煽って来る。
「でもなあ … そうだ、俺の会社内ではなく、他の会社のヤツにするか、そうだ、取引先に朝霧って言うヤツがおるんだけど、これがまたサプライヤー虐めの嫌なヤツで、アイツの悪を炙り出してやるか、うん、そうしょう」
高見沢も徐々に悪人のような目付きになって来る。
浮舟は既に覚悟を決めている。
「御意,私の最初の対象物として、まずは無難な所で、よその会社の朝霧さんね、高見沢さんを師と仰ぎ、指導を受けながら、女影武者の業務を遂行しますわ」
「よっしゃ、朝霧の地獄送りだ、その悪魔シナリオを二人で書いてみるか、ただし書くだけだぞ、俺は実行はしないからね」
「高見沢さんはやっぱり善良市民ね、今回はその方が良いかも、これで契約成立ね」
ここに二人の主従関係は構築され、そして初仕事の合意を見たのだった。
作品名:いまどき(現時)物語 作家名:鮎風 遊