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いまどき(現時)物語

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しかし、高見沢は会社奉公人として長年生きて来た。
突然並のサラリーマンからセレブリティ(celebrity : 名士)の御主人様に格上げされても、どう振る舞って良いものか、もう一つ要領を得ない。

「浮舟、まず御主人様として、何を指示したら良いのかなあ、今宵一夜を楽しく共にしようというのは御法度なんだろ、どんな初仕事を命令すべきなんだろうなあ?」

「高見沢さんて、本当にプチ市民ね、今までの生涯、御主人様のような地位には無縁だったのね」

この現代サラリーマン社会では、人類が二分類出来る。
その一つは、ボロンチョンに言いたい放題出来るヤツ。 
そしてもう一つは、いっつもボロンチョンに言われ放しの連中だ。
そして、それらの二極分化となっている。
高見沢は生涯後者の部類で、積年の恨み辛みが会話に噴き出して来るのだ。

「口惜しいが、実はそうなんだよなあ、いっつもボロンチョンに言われ放し、かつ虐められ放しの使用人、この身分で、ここまで来たんだよ … クッソー!」

「それじゃ高見沢さん、会社の中に大嫌いな人っているでしょ、
だったら、高見沢さんが不利益を被らず、私がその人の悪行を暴いて、地獄へと落として上げますわ」
浮舟はグリーン・アイズを潤わせながら、魔女のような恐ろしい事を言い出す。

確かに、誰しも現代社会をドロドロと生きていると、殺意さえ覚えるようなヤツがいるものだ。
野壷のどん底に突き落としてやりたい。
高見沢はゾクゾクとしながら、されど、心地良い震えが背筋から爪先へと走るのだった。
どうも浮舟の誘導で、危険な魅惑に取り込まれてしまったようだ。
そして、高見沢は自分の心情を整理をするように、独りブツブツと呟く。

「一千年前の宇治橋、茫然自失に川を眺め突っ立っていた、そして突然に白鷺のように清流に舞い降りてしまった、あのか弱き乙女子が、これほどまでに変身してしまったのか …

今は悪いお姫様、イヤハヤ、逞(たくま)しくなったもんだ」


作品名:いまどき(現時)物語 作家名:鮎風 遊