いまどき(現時)物語
「浮舟さん、アンタはんが俺の女影武者になってくれはるって … えーがな、えーがな!
この世で一番セクシーな職業、それは女影武者だ!
不肖私めが御主人様を務めさせてもらい、グリーン・アイズの華麗なる美人浮舟が … 俺の影武者になってくれるって、
俺、やっぱり人生長くやって来た甲斐があったよ、これぞ煩悩多きサラリーマン人生の集大成だ、有終の美を飾って、浮舟と共にぱっと花を咲かせてみるぞ!
身体が寂しくなって疼く時は、いつでも全身全霊を傾けて、この御主人様が面倒見て上げるからな … 精一杯仲良くしようね」
高見沢一郎は完全に錯乱状態。
だが、浮舟の目付きが急に恐いものに変わる。
「このオッサン、大丈夫かしら?」と睨み付けて来る。
「高見沢さん、何一人で興奮してるのよ、ちょっと落ち着いて下さいよ、援助交際じゃないのですから、
私はプロの影武者よ、御主人様の高見沢さんと私の間はビジネス・ライクの関係があるだけよ、そこには何の男女の関係もないし、持ち込んではイケないの、わかる?
セクシャルな事は完全に抜きよ、勘違いしないで」
高見沢は狐につままれたような顔付きになっている。
「何でだよ? 女影武者との間には、それはそれはの淫靡(いんび)な男女関係は成立しないのかよ」と不満気だ。
「さあ、大きく深呼吸をして、さっきと同じように平常心回帰術を使って下さい、いいですか、はい」
高見沢は、小娘・浮舟から言われるままに、とりあえず大きく息を吸い込んだ。
そしてヤケクソ気味に、加齢臭のある息を吐き出すのだ。
作品名:いまどき(現時)物語 作家名:鮎風 遊