いまどき(現時)物語
「ところで、俺が先生になって、OJT(実務訓練)しながら、どんな初仕事がしたいの? 遠慮なく言ってみて、精一杯頑張らせてもらうから」
高見沢は若い女性から頼られる心地良さで、誠に上機嫌だ。
「実はね、この間、卑弥呼女王からお話しがあったのです、浮舟は現代社会にワープして来て一年になります、これからどんな職業に就いて生きて行きたいと思っていますかって聞かれたのですよ」
浮舟は少し緊張気味な顔付きとなり話し始めた。
「ふうん、それでどう返事したの?」
「私、その答えをまだ持っていませんと答えたのよ」
浮舟は真顔になって話して来る。
高見沢は「そらそうだなあ、現代社会の新人だから、わからないよね」と応えながら、浮舟のこれからの生き方を決める重い話しに身を正した。
「それで女王は、どう仰ったの?」と高見沢は聞き返した。
「卑弥呼女王はね、それじゃ女影武者になりなさいってね … 」
女影武者、日常会話の中ではそうそう出て来る言葉ではない。
そんな突拍子もない職業名を聞いて、高見沢は思わずゴクッと唾を飲み込んだ。
「女影武者って … 女王もこれまたスゴイ事言うもんだね」
「そうなの、女影武者を、生涯の天職にだって」
「へえー、なるほどね、考えてみたら確かに、グリーン・アイズを持った浮舟だ、魅惑的で秘密めいていて、これイケテルかもな」
高見沢はまだ充分に理解が進んでいない。
一方浮舟は、少し興奮気味なのか、抜けるような白い肌をほんのりと薄紅色に色付かせている。
「ワタシ的には、女影武者って、ピンと来るものがあるのよ、やってみたいと思ったわ、それで女王には、はい、そうしますと答えたの」
「ちょっと結論が早過ぎるんじゃない」
「そう思われます?」
「だって女影武者って、御主人様のためにトコトン奉仕して働くんだぜ」
「承知してますわ」
「それで、浮舟の御主人様になるのは … 誰なの?」
高見沢は一番気になる事を聞いてみた。
作品名:いまどき(現時)物語 作家名:鮎風 遊