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いまどき(現時)物語

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「脱皮経験なしの出世下手なお父さん、納得した?」

「はい、大変納得です … それにしても脱皮後の浮舟って、ソフト/スマート/ソフィスティケーティッド(sophisticated)/セクシーの4S美人だ、どっから見てもマイタイプぞえ」
高見沢の会話が未だ上擦っている。

「それって、現代語で誉め殺しって言うのと違います?」
浮舟はこう問い詰めながらも、眼鏡の奥から美しいエメラルド・グリーンの瞳でじっと見詰め返して来る。
高見沢の脳はぞくぞくとする程の色気感情が走りっ放し。

このままでは自制出来ない状況に陥ってしまう。
放っておけば、抱き付いてしまうかも知れない。
しかし、さすが百戦錬磨の生き残りサラリーマン、自動的に脳内セクハラ・リスク・センサーが反応し、色気感情抑止機能が働き始める。

つまりスケベ感情の高ぶりが危険線を越えそうな時、ウォーニング(警報)信号が脳に発せられ、己の平常心回帰術を使えと脳から自己命令して来るのだ。

平常心回帰術とは、
要は、気に入らない上司の事を思いっ切り思い出し、セクシャルに沸騰している脳を冷やすという技。
高見沢は、セクハラ抑止命令に従い、早速気に食わない上司の事を思い出し始める。

「クッソー、アホ上司め、自分のカッコばっかり付けやがって、コンチキショーのナルシストめ、今に見ておれ、どっかで俺が足引っ張って地獄へ突き落としてやる!」

ほんの二、三十秒の時間だが、念仏を唱えるようにブツブツと呟いている。
そして、さすが高見沢、見事に平常心を取り戻すのだ。

「高見沢さん、何恐い顔してはるの、私、何か悪かったかしら?」
浮舟が優しく気遣って来る。

「チャウチャウ、心配しなくて良い、俺、ちょっと心身とも興奮気味で、自分を見失いそうだったので、平常心回帰術を使って気を落ち着かせてたんだよ」

「そう、それなら良いのだけど」
高見沢は「もう大丈夫」と言いながら、浮舟に微笑み返した。
そして、次の話題へと話しを振って行くのだった。


作品名:いまどき(現時)物語 作家名:鮎風 遊