いまどき(現時)物語
辺りはもうとっぷりと暮れ、より夜へとなってしまった。
下から見上げると、ビルは夜空の中へ吸い込まれるように斬新に突き立っている。
東京の高層ビル、それは洗練されたカルチュラルな現代的趣と力強さがある。
多分、ハイテク・コンピューターを腹一杯喰って、時代最先端を突っ走っているのだろう。
未来都市の一角を形成している高層ビル、そこから醸し出される雰囲気に何か近寄り難い金属的な堅ささえ覚える。
高見沢は気を落ち着かせるために、無理に息を整え、もう一度目を凝らしてみた。
最上階の辺りだけが、そんな堅さとは裏腹にパープルに柔らかく輝いている。
「オー、何とセクシーで摩訶不思議な色加減なんだよ、あそこには一体何があるのか確かめてみたーい、ヨーシ、今から昇ってみるぞ」
会社では決して見られないヤル気満々。
高見沢はひと気のないビル内フロアーに入り、エレベーターの前まで突き進んだ。
フロアー表示は、〔41〕までだ。
どうもここは41階建ての高層ビルらしい。
高見沢は早速エレベーターに乗り込み、最上階の〔41〕のボタンを押し込んだ。
最新型のエレベーターは音もなく発進し、滑らかに上昇する。
そして、あっと言う間に41階に辿り着いた。
到着サイン音とともにドアーは静かに開き、高見沢は41階に降り立ったのだ。
作品名:いまどき(現時)物語 作家名:鮎風 遊