いまどき(現時)物語
翌日、高見沢は待ち合わせのコーヒー・ショップへと入って行った。
卑弥呼女王に浮舟を預けて一年が過ぎた。
あれからどんな女性へと変身したのか全くイメージが湧いて来ない。
昨日のケイタイ会話、そこから伝わって来る雰囲気では、既にこの現代社会に慣れた様子、そして日々生き抜いて行けるだけのパワーを身に付けたようだ。
その上に、少し突っ張っているのか、「キャビキャビの現代レディーよ」と言い切っていた。
「そんなハシャいだ事まで言える程に、今の時代に馴染んでくれたのか」
高見沢はそう思うと、これまで取って来た己の行動に間違いはなかったと思えるのだ。
そんな他愛もない自信を胸に秘めながら、ゆっくりと歩を進める。
店内には、古風でしっとりと落ち着いた雰囲気が漂っている。
高見沢は注意深く見渡してみる。
「高見沢さん、こちらよ!」
奥の方から華やかで弾んだ声が飛んで来た。
活き活きとした若い女性が思いっ切り手を振っている。
ウルフカットの野性的な髪は淡い黄金色に染められ、センスの良いダークブルーのビジネス・スーツを、びしっとスリム・バディーに決めている。
奥深い理知と教養を覗わせる黒縁の眼鏡を掛け、胸を張り、背筋をきりっと伸ばし、堂々と立っている。
実にスラッとし、スレンダーな姿態はセクシーそのもの。
バディー輪郭曲線は、首筋から柔らかな膨らみを持つバストへ。
そしてきゅっとくびれたウエストへと続く。
さらにだ、
そっと触れてみたい衝動にかられる張りのあるヒップ、そこから実に美しく形の良い足へと、しなやかに曲線が走り抜けている。
極め付けは、やはり何と言っても … グリーン・アイズ(緑の目)。
エメラルド・グリーンの澄んだ瞳が、黒縁の眼鏡のレンズで大きく拡大されている。
作品名:いまどき(現時)物語 作家名:鮎風 遊