いまどき(現時)物語
平安絵巻の世界から現代へと時空間移動をして来た浮舟、
最初多少の戸惑いはあったが、高見沢のサポートで随分慣れて来た。
そんなある日、高見沢は浮舟を第七六代目の卑弥呼女王の元へと連れて行ったのだ。
浮舟は今女王の前に進み出て、堂々と向き合っている。
女王のグリーン・アイズの焦点と浮舟のグリーン・アイズの焦点が重なり合った。
卑弥呼女王は柔らかく微笑み、言葉を発する。
「夢浮橋を渡り、一千年の時空を越えて、この女王国にようこそ来て下さいました、
浮舟姫の新たな門出です、我がグリーン・アイズ同盟の良き同朋として、これからの姫の人生をお支え申し上げましょうぞ」
浮舟は今までの辛かった出来事を思い出し、キラキラと輝く涙を流し感激している。
そして殊勝にも、高見沢に向き直し、手を合わせ深く頭を下げるのだ。
高見沢は今までの人生の中で、拝まれて、その上にそこまで人から頭を下げられた経験はない。
「いやいや、礼なんていらないよ、浮舟が可愛かっただけだよ、まあ気にせんといて」と言いながら、心の充実感を覚えるのだった。
卑弥呼女王はその様子を伺いながら、高見沢に向かって威厳高く申し伝えて来る。
「高見沢さん、貴方の今までの人生で経験した事のなかった人助け、
宇治川に身を投げた浮舟、溺れ流される事も辞せずに助け申した、
また今回は、熱く燃え盛る尼寺から浮舟を救い出し、浮舟の望み通りに夢浮橋を渡り、この現代の邪馬台国に連れ申した、見事なミッション遂行であったぞえ、
それ故に、貴職の査定をA評価とする!」
高見沢はなんでまたここで査定結果の発表があるのかわからないが、とにかくA評価だ。
こんなに褒められる事なんて、会社ではまずあり得ない事。
そのためか、歳も忘れて、嬉しそうにニタニタッと笑っている。
「高見沢さん、ヤッタねえ!」
そばに寄り添っていたマキコ・マネージャーも、素直に喜んでくれている。
そして事もあろうか、勝気なマキコお姉さんが感激のあまり高見沢にぴたっと抱き着いて来た。
「どや、マキちゃん、俺は元々出来る男なんだよ、これでわかったろうが」
高見沢は耳元で囁きながら、この時とばかりに力一杯マキコ・マネージャーを抱き締める。
作品名:いまどき(現時)物語 作家名:鮎風 遊