いまどき(現時)物語
浮舟も必死の形相で訴えて来る。
「夢浮橋、渡らせ給え!」
高見沢も充分それに応える。
「よっしゃ、浮舟、約束通りだ、覚悟はいいか、薫も匂の宮の事も、もうすべてが終わったんだよ、全部忘れて、二人で新しい世界への逃避行だ!
一千年の時を超えて、自由な世界に連れて行ったるよ!」
高見沢は浮舟の肩をしっかり抱きかかえ、
「夢浮橋、渡るぞ、これこそ明日への旅立ちだ、いいんだな?」と大きな声で最後の確認をする。
浮舟は深く深く頷く。
二人は今にも転げそうになりながらも、尼寺を取り囲む男達の間を走り、すり抜けて行く。
「もののけ、恐ろしや、もののけ、恐ろしや」
公達は高見沢の不思議なスーツ姿を見て脅え、後退りをして道を開けてくれる。
高見沢は浮舟の白く細い手を引きながら、現代社会へと通じる回廊へと急いだ。
こうして、可憐なグリーン・アイズの大和撫子は夢浮橋を渡り、この現代社会へとワープして来たのだった。
作品名:いまどき(現時)物語 作家名:鮎風 遊