いまどき(現時)物語
高見沢は年甲斐もなく駆け出している。
熱い。
火の粉が高見沢に容赦なく降り掛かって来る。
「浮舟!」
高見沢は一緒懸命に叫んだ。
「どこにいるんだ?」
火の中を恐れも抱かず突き進む。
頑張れ中年男!
そして、燃え盛る火の中の一室に、
白い頭巾を被った尼達が脅えて一塊となっているのを発見する。
しかし、どの尼さんが浮舟なのかわからない。
高見沢は一人一人の瞳を覗き込んで行く。
そして、遂に見付けるのだ。
「そちこそは浮舟ぞ、いとど目出度し … 見つけたり!」
なんと緑の瞳の中で、炎が燃え盛っている。
「グリーン・アイズ … ビューちフル!」
高見沢は、この非日常的な場面で、思わず雄叫びを上げざるを得なかった。
浮舟も、スーツ姿の高見沢に気付いたのか叫び返して来る。
「もののけ!」
だが高見沢は、
「またでっか、なんで俺はいっつも … もののけなんや!」と超不満。
しかし、「さあ浮舟、ここから逃げるぞ」と、いきなり手を取って走り出すのだった。
作品名:いまどき(現時)物語 作家名:鮎風 遊