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いまどき(現時)物語

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火の手は勢いを増し、ゴーゴーと燃え始めている。

高見沢は、なぜ火事になっているのかがわからない。
寺周辺の男達は大騒ぎしている。

確か薫と匂の宮は、グリーン・アイズを持つ浮舟を愛し続け、血眼になって探して来たはずだ。
そして、この田舎の尼寺に浮舟が生き延びている事を突き止めたのだろう。

浮舟を我が手に取り戻したい。
しかし、場所は尼寺、無理に侵入する事は許されない。

思案の果てに、彼らのどちらかが、浮舟を炙り出すために寺に火を放ったのだ。
今、その火は轟々と燃え上がっている。

秋の夕暮の穏やかな風景を、気が狂ったように赤く赤く燃え染め抜いて行く。
高見沢は、今あまりの非常な出来事の中にいる。

そして、この尋常でない美に感動さえ覚えている。
しかし、浮舟の事が心配だ。

「大丈夫かな? 
よっしゃ、今度は水火も辞せずの火の番だ、浮舟、今助けに行くからな!」

怖がり屋の高見沢、
しかし燃え盛る火に男気が煽られてしまったのか,躊躇なく火の中へと飛び込んで行くのだった。


作品名:いまどき(現時)物語 作家名:鮎風 遊