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いまどき(現時)物語

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第4章  夢浮橋、渡るぞの巻 


東京の山手線駅ホームから高層ビルが見える。

浮舟を救い出すために、高見沢はその42階に戻って来た。
前回と同様に、時空を越えて行けるパープルな回廊を渡り、一千年前の平安時代へとワープしたのだ。

滞在出来る時間は、たったの1時間。

焦る気持ちを抑えながらも、高見沢が飛びした所、それは山裾にある鄙(ひな)びた寺だった。

秋深まる夕暮時か、つるべ落しに日が暮れ始めている。
夕陽が周囲の風景を赤く染めて行く。
夜への静寂が、今から徐々に押し寄せて来るはずだ。

しかし、何か騒々しい。
どうも寺の中で、大騒ぎになっているようだ。
女達の甲高い悲鳴が聞こえて来る。

寺の周囲の生垣の横に、二組の公家らしき男達がたむろしている。
その中の長らしき者が、いろいろと指示を飛ばしているようだ。

高見沢ははっと気付いた。
「彼らは、ひょっとしたら … 薫の君と匂の宮か」
今回は、浮舟を助け出す事を目的にしてワープして来たのか、状況認識が早い。
自分がどこにいるのか直ぐわかった。

「おっ、ここは比叡山の麓、浮舟が隠れてる小野の尼寺か」

そんな時だった。
落ち行く夕陽、それ以上に、辺り一面が赤く染まり出したのだ。

「尼寺が、燃えている!」
高見沢は思わずそう叫んだ。


作品名:いまどき(現時)物語 作家名:鮎風 遊