いまどき(現時)物語
「アホ! やっぱり私、助けに行くの止めた、きっぱりと断ります」
されど、高見沢は中年サラリーマン、粘りは充分。
「何でやねん! 俺と二人切りで、幸せ探しの旅に出るんや!」と叫ぶが如く言い放っている。
これを聞いて、マキコ・マネージャーは高見沢に真正面に向き直って、諭すように言い切るのだ。
「私は、実力ある一流のキャリア・ウーマンよ、はっきり言うわよ、高見沢さんには未来がないの、だけど私には輝く未来があるの、
事実として、これが永遠に埋まらない私達の大きなギャップ、
冷静に考えてみなさいよ、だいたいオッサンとあちらの世界へ落ちて行く事なんて、地球が滅びても、無限大のゼロの確率でもアリエナーイ事なの」
「マキ姉さん、えらい強気じゃん、そんなプライド過剰症候群がアンタの幸せ探しの足かせになってるんだよ、せいぜい負け犬の遠吠えにしかなってないよ」
高見沢は、女性の心をぐさっと突き刺すようなふざけた事を言ってしまっている。
しかし、マキコ・マネージャーは落ち着いている。
ドスを利かせながら駄目押しの指示を飛ばす。
「高見沢さん、水火も辞せずで、前回は水だけでしょ、だからもう一回頑張って、
今度は浮舟を助け出して、ここへ連れて帰って来て頂戴、私ここで待ってるわ」
高見沢は首を左右に振りながらも、「これが俺の宿命か」と諦め思考を走らせている。
「ああ、わかりましたよ、一丁覚悟してみるか、マキちゃんと俺、我々二人のグリーン・アイズのミッション遂行のためにね」
高見沢は成り行きのままに、弾みで再決意をしてしまったのだった。
作品名:いまどき(現時)物語 作家名:鮎風 遊