いまどき(現時)物語
高見沢は念を押すように、「ああ、浮舟を本当にそのようにしてやりたいけど、これって結構意味深いだろ」と呟いた。
「そうよね、浮舟の言う夢浮橋渡らせ給えって、単なる色恋の話しじゃないかもね」
マキコ・マネージャーは、急にその真意は何なのか考え込んでいる。
「俺の推察では、男と女が絡み合う愛と憎しみの世界から、穏やかで、もっと自由な世界へ行きたいと言う事だと思うんだけどね」と、高見沢は噛み砕くように答えた。
「それ正解よ、ひょっとしたら、高見沢さんにその身を預けてしまったのかもよ」と、マキコ・マネージャーは一人頷いている。
「マキちゃん、ヤッパそう思うか、それじゃ、一千年の時を越えて、この自由な現代社会に連れて来てやらないといけないっていう事なのかなあ?」
高見沢は、今一度新たな行動を起こすべきなのか迷い出している。
「絶対にそうよ、私、高見沢さんと一緒に、浮舟を助けに行っても良いかもよ」
遂に、マキコ・マネージャーから一大発言があった。
高見沢はこんな千載一遇のチャンスを見逃さない。
「えっ、ホントか?」
「うーん、まあ〜ね」
一緒に助けに行っても良いと断言してしまったけれど、やはりマキコ・マネージャーの心が揺らいでいる。
だが高見沢は、この絶好機を見逃さまいと必死。
「マキちゃん、お願い、二人で逆・夢浮橋を渡って行こうよ、
一千年前の平安時代に仲良くワープしようぜ、
それで、浮舟を現代社会に送り込んで、俺ら二人は向こうの世界に居残るんだよ、
マキちゃんはお姫様になる、俺は高貴なお公家さん、
平安絵巻のそれはそれはの雅(みやび)な世界で、マキちゃんと毎夜おじゃれおじゃれと淫靡(いんび)な戯れで、一生濡れまみれ、
残された人生を春爛漫と謳歌する、誠にいいじゃんか、
これも人生、それも人生 … OKだろ?」
マキコ・マネージャーの目が、見る見る内に鋭く吊り上って行く。
作品名:いまどき(現時)物語 作家名:鮎風 遊