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いまどき(現時)物語

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高見沢は、「浮舟の事か、彼女は奇麗なエメラルド・グリーンの目を持ってたよ」と素直に情報を伝えた。

「それなら早くここへ連れて来てよ、高見沢さん、我々のミッション忘れていないでしょうね?」
マキコ・マネージャーは、言葉は柔らかいが、まだまだ突っ込んで来る。
「いや、忘れてはいないんだけど、ちょっとね」と、高見沢は歯切れが悪い。

「何があったの、言いなさいよ、オッサンの戸惑いを聞いて上げるわ」
マキコ・マネージャーは興味が増して来ているようだ。

「俺、実はなあ … 怖がりなんだよ、
水火も辞せずの人助けプログラムに悪乗りしてしもうて、一千年前にワープしてしまってね、

それで、宇治川に身を投げた浮舟を、俺死にそうになって助けたんだけど … 」
高見沢はここまで話して、ふうと大きく溜息を付いた。

「良い事をしたんじゃないの? 立派なんだから、もっと自信を持って頂戴よ」
さすがマキコ・マネージャー、弱気な相手を乗せるのが上手い。
高見沢はここまで優しく言われれば、直ぐに純になってしまう。

「今から考えると、怖くって、その上にもののけと化け物呼ばわりされて、もう人助けなんてこりごりなんだよなあ」と吐いてしまった。

「わかったわ、それで浮舟はどうなったの?」

「ああ、汚い坊主が比叡山の麓にある尼寺に連れて行った、宇治十帖の物語そのままだったよ」

「ふうん、それで浮舟は、何か言っていたの?」
マキコ・マネージャーの追求が続く。

「ああ、言ってたよ … 夢浮橋、渡らせ給えってね」

マキコ・マネージャーはこれを聞いてじっと考えている。
そして、しみじみと答えるのだ。

「へえ、夢浮橋、渡らせ給えってね、そんな思い切った事を言ってたの?」
マキコ・マネージャーは、どうも感動しているようだ。


作品名:いまどき(現時)物語 作家名:鮎風 遊