いまどき(現時)物語
夏の始まりを予感させる六月の夜風が、高見沢の純な感度をさらに高めさせてくれる。
高見沢は「きっときっと良い事が … 」と自信なそうに呟き、深く息を吸い込んだ。
「それにしてもあのビルの風景って、結構イケてるよ、脳に光の粒々が飛び込んで来て、病んでる脳芯をトントンと叩いてくれるような感じがするよなあ」
高見沢はぐっと思い切り背筋を伸ばした。
そして、いつも通りながらこんなシチュエーション(situation : 状況)では、過去何回も繰り返して来た定番セリフが口を突いて出て来るのだ。
「明日からまた元気、イッチョ出すか!」
このまま一生野壷の中かと宿命さえも感じさせる、そんなどうしようもない時の流れの中で、悲しくも一人もがき脱出を試みている。
そして、突然に。
高見沢は何か不思議な光を発見する。
「一体あれ … 何だよ?」
野壷の底から天空に一条の光明を見つけたかのように、大きな声を上げるのだった。
作品名:いまどき(現時)物語 作家名:鮎風 遊