いまどき(現時)物語
「アンタ、サラリーマンの基本、知っているの?
何年お勤めしているのよ、要はホウレンソウ、それが中流サラリーマンの基本でしょ」
高見沢は、ここまで言われ放しではたまらない。
後は刺激的、かつ自己防衛的な発言をしてしまう。
「奇麗なマキお姉さんが、えらい古典的だよ、
ホウレンソウって、報告/連絡/相談の事だろ、そんなの承知してまっせ、俺をあんまりアホにすなよ」
「そしたら、それを実行しなさいよ」と、マキコ・マネージャーが余計にムキになって来て、もう止まらない。
「何が古典的よ、この複雑な現代社会だからこそ、互いにちゃんと報告/連絡/相談のホウレンソウを心掛けないとダメ、
高見沢さんはホウレンソウも出来ないハグレ勤め人、
だからいつまで経っても出世街道から外されているのよ、どうお、違う?」
高見沢もこんな人格完全否定の非難に合うともう黙っていられない。
「放っといてくれ!
俺は、四つの【み】が渦巻き、ちくり/出し抜け/落とし入れが日常茶飯時の会社生活の中で、それらに真正面に向き合って、気高くも【さしすせそ】で生き延びて来たし、今も頑張ってるんだよ」
高見沢はこんな訳のわからない事を言い出して、ブスッと居直っている。
「四つの【み】? 何よ、それ?
それに【さしすせそ】って、そんなの初めて聞いたわ」
マキコ・マネージャーは鶴のように首を傾げている。
実は、これが高見沢のいつもの手なのだ。
話の展開が不利になって来た時は、意味ありげだが訳のわからない事を言って、相手を煙に巻いてしまう。
そして、今回もいつものように自分のペースへ引きずり込んで、自信たっぷりに説明をし始めるのだ。
作品名:いまどき(現時)物語 作家名:鮎風 遊