いまどき(現時)物語
高見沢が粛々とミッションを拝命した時から、三年の月日が流れた。
古都京都の時節は、もう初秋。
とは言うものの、今年の夏は実に暑かった。
東山、北山、西山と三方山に囲まれた盆地、何もかもがヒートアップする。
しかし、そこには古代からの知恵がある。
鴨川の床で涼を取りながら凌いで行けば、いつの間にか盛夏残暑と足早に終わってくれる。
そして、いつの間にか秋の始まりを感じさせる微風が吹き出すのだ。
そんな初秋の頃、突然マキコ・マネージャーから弾んだ声でケイタイが掛かって来た。
「高見沢さん、もうそろそろ上期が終わるわよね、貴方の査定の時期なのよ」
高見沢はさっぱり意味がわからない。
「査定? それって、何なんですか?」と、高見沢は遠慮がちに聞き返した。
すると、マキコ・マネージャーから嬉しそうな声で、
「アナタの査定よ、わかる?
要は、アナタがどれだけこの上期にミッションを遂行したのか、その実績をきっちり評価するのよ、どうお?」と飛び込んで来た。
高見沢はこれを聞いて急に向っ腹が立って来る。
「あのね、マキちゃん、査定ってか、俺そんなん知らへんで、
いいか、俺は今の会社の仕事が本命なんだよ、だから、そこできっちり査定されてるんだよ、
女王様から拝命したグリーン・アイズ・プロジェクト、確かに俺の命だけど、それはマイ趣味の範囲で、マイ趣向で動く、
報酬もくれてないアンタハンに、何で査定されなアカンのだよ、そんなもの放っといてくれ、それはナンセンスちゅうもんだよ」
高見沢は一気に捲くし立てた。
「高見沢さん、ちょっと落ち着きなさいよ、
わかったわ、それじゃ査定の前に、まずは個人面談しましょ、それなら良いでしょ、だから明日にでも邪馬台国に出勤して来てくれない、いいでしょ … ねっ」
作品名:いまどき(現時)物語 作家名:鮎風 遊