いまどき(現時)物語
そもそも、ちょっと話しは過去へと飛んでしまうが、
高見沢が古代女王国と関わって、事ここに至った発端は、三年前の奇妙な出来事だった。
それはリフレッシュにと出掛けた沖縄旅行。
その島内観光のためにレンタカーを借りた。
そこには、不思議な〔時代選択〕なる最新ナビ機能が付いていた。
高見沢は、「目的地を選ぶのは普通地域選択だよなあ、しかし、時代選択とは … 一体これは何なんだよ?」と驚きながら、〔1〜5世紀〕をクリックしてしまった。
すると、たちまち目的地の選択肢表示となり、その中の一つに〔邪馬台国〕があった。
そして、多分それは単なるハズミだったのだろう、〔邪馬台国〕を選択してしまった。
その後十秒の時間経過もなく、目的地として、〔邪馬台国入口〕の存在場所が画面表示されたのた。
その在処(ありか)なる住所は、なんといつも夜遊びでウロウロと徘徊する京都祇園、その桜見小路東入ルとあった。
全くの驚愕至極。
しかし、そんな好奇心をそそる新情報も、沖縄旅行を終え、仕事に追いまくられる日常生活に戻ってしまえば、全て忘却のかなたへと去ってしまった。
時は流れ、その年の瀬の事だった。
社内忘年パーティが、先斗町(ぽんとちょう)で開かれ、例年になく盛り上がりの中で引けた。
高見沢は少し疲れていたのか、珍しく二次会への誘いも断り、家路へと急いだ。
歩調を速めながら、四条大橋を渡り歩いている。
京都の冬、小雪混じりの比叡おろしが容赦なく高見沢に吹き付けて来る。
アルコールでふやけ切ってしまった高見沢の脳芯を、冷え過ぎた冬の風が突き刺して行く。
高見沢は冷感でブルブルっと身震いをした。
作品名:いまどき(現時)物語 作家名:鮎風 遊