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いまどき(現時)物語

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高見沢は、元来た紫の回廊を通り、今ある現実の世界へと走り戻って来た。

「ナイス・シー・ユー・アゲン(Nice see you again !)、よろしゅうお帰りやす」
夕顔は高見沢の無事な姿を見て、ほっとしたような表情で声を掛けて来た。

「夕顔さんとの約束通り、1時間で戻って来たよ」と、高見沢は無事帰還で嬉しそう。
そして夕顔は、何か愉快な土産話しを期待しているかのように、ニコニコしながら、
「水火も辞せずの究極ハッピー・ワールドは楽しかったみたいね」と聞いて来た。

しかし高見沢は、「人助けって、結構エネルギー使うよな、ビショビショに濡れてしまうし、命懸けだし、ちょっとね、身を挺しての人助けって、俺の性分には合わなかったかもなあ」とまずは正直な感想を伝える。

「だけど、満足そうな顔をしてはるよ、何か面白い事があったのでしょ」

「実はそうなんだよ、夕顔さん、お陰様で不思議な体験をさせてもらったよ、それはね、恋に疲れたベッピンさんが川に飛び込みはってね、それを俺が助けて来たのだけどね」

「へえ、良かったじゃない」

「それでね、その女性、完全に日本人だと思うんだけど、会話がもう一つ通じなくってね、不思議なんだよなあ、ここにその女性が書いてくれたメモがあるのだけど、これどういう意味なのか理解出来るか?」

高見沢は、達筆で書かれた恋歌を夕顔に見せた。

〔橘の小島の色は変わらじをこの浮舟ぞ行方知られぬ〕          

夕顔は気分を乗せてこれを詠み、まことに素早く反応して来る。


作品名:いまどき(現時)物語 作家名:鮎風 遊