いまどき(現時)物語
女性は、この不可解なもののけ・高見沢に助けられ生き返った。
そして「イッチョ元気」で、人生やり直しのパワーをもらったようだ。
女性は、気丈さも取り戻したのか見つめ返して来る。
高見沢はもう一度、そんな女の潤んだ瞳をじっと見つめ直した。
その瞬間に衝撃が走った。
なぜもっと早く気付かなかったのだろうか。
「えっ、お姉さんて、グリーン・アイズ(緑の瞳)だったのか、それも世にも稀なるエメラルド・グリーンの瞳、これはスっゴイぞ!」
高見沢は女性の瞳に見惚れている。
「奇麗な緑の目だね、これって古今東西結構珍しくって、ホント貴重なんだよ、
ヨッシャ、機会作ってもう一回逢いに来るからな、それまで元気にしておれな、その時にもっと自由な世界に一緒にワープしよう!」
女性は、高見沢の話しをじっと聞いている。
不確かではあるが、およその意味は通じているようで、柔らかく微笑み返して来る。
そして、なんと高見沢に手を合わせ訴えて来るのだ。
「夢浮橋、渡らせ給え」
高見沢はまたまた何の事かさっぱりわからない。
しかし、関西系のノリで返事してしまうのだ。
「ああいいよ、夢浮橋ね、次回逢った時に、一緒に渡ろうな … 任せなさ〜い!」
こんな無責任な発言の後、高見沢は「じゃあなあ」と言って、この水火も辞せずのハッピー・ワールドの出口へと急ぐのだ。
「美しくげなりて、面白しもののけ!」
女性は袖を振りながら、親しみをも込めた声で叫んで来た。
高見沢は、多分「可愛くって、面白い人、もののけさん!」と言ってくれているのじゃないかと勝手に解釈している。
そんな高見沢の自己満足とは裏腹に、
女性の横では、坊主が無表情で淡々と念仏を唱え続けているのだった。
作品名:いまどき(現時)物語 作家名:鮎風 遊